信楽に来るまでのおはなし
信楽は子どものころから慣れ親しんだ町です。
僕は車で30分ほどで来ることができる大津生まれで、
大学のサークルで陶芸を始めてからは仲間うちで陶芸の森の穴窯を借りたり
窯元を見学させてもらったり、信楽には頻繁に通っていました。
信楽に来る前は大津に住んでいて、実家にほど近いアパートでひっそりと制作していました。
そこで本格的に陶芸を始めたのですが、そこは陶芸をするために借りた部屋ではありません。
3階まで100kg分の土を持ち上げ、
ろくろで形にしたものを割れないように箱に詰めて車に乗せて、
信楽にある陶芸の森の窯で泊りがけで焼成して、
完成した器を包んで運び上げ、イベントに合わせて箱に詰めて降ろします。
3LDKもあったはずの部屋のほとんどが
窯やろくろといった作業道具と在庫の器が所狭しと積まれ
他に場所がないので作業スペースと間続きの畳をどうにか片付けて布団を敷いていました。
自宅に作業場があるというより、作業場に寝る場所があるというイメージです。
賃貸なので作業の音が騒々しくないか、壁や床を傷つけていないか、
排水は問題ないかなど、常に気を張る毎日が3年続きました。
いま思うとなかなか辛い日々でした。
ある日、そんな僕たち夫婦の様子を知ってくれた篠原さんご夫妻から
陶芸家に理解のある大家さんを紹介していただいて
ほどなくして信楽に来ることができました。
信楽に来てからはあの頃が夢だったように、のびのびと制作ができています。
引っ越しが一段落してようやくろくろに座ったときは
まるで初めて呼吸ができたかのように嬉しかったのを覚えています。
↓ 信楽の工房はこんなところです。